本文へスキップ

新しい視点で活動する コミュニティ高専人 

発起人挨拶ORIGINATOR GREETING


東京工業高等専門学校名誉教授 佐藤義隆


 私は1975年に東京高専に就職し、定年まで36年間数学教員として同校に勤務しました。

 高専教育についてほとんど知らないまま就職しましたが、最初の授業で教壇に立ったとき、高専生の生き生きとした表情、利発さ、数学の能力の高さにびっくりし、それ以来現在に至るまでずーっと、高専生、高専教育の大ファンになってしまいました。

 高専生の一般的特徴として、ものつくりに特別な興味と才能を持つ人が少なくないと思われます。それだけに、人柄は直向きで、真面目で誠実な人が多く、しかし他の人たちに対しては控えめで、自己アピール力はあまり強くはなく、そのため社会に出てから “損” をしている人も少なくないのでは、と感じています。

 高専に就職して何年か経ち、担任をしたり、卒業生を送り出してみて分かったことは、高専卒業生の中には、就職した企業から実力に見合う正しい評価をされていない人がいる、ということでした。あれほど優秀な人材がどうして?という思いを何度かしました。そして、これは、高専生はもっと結束した方がよい、ネットワークを創って自分たちの立場を社会で主張すべきだ、と思い「高専卒業生ネットワーク」構想を持ち始めました。1980年頃のことです。それ以来、現役学生や卒業生に対してその構想を話したり、創ることを試みてきましたが現役教員の仕事は非常に忙しくなかなか着手するまでには至りませんでした。

 これとは別なことですが、文科省の国費留学生受け入れの数学問題出題委員をすることがあり、それを切っ掛けに留学生が自国で受けている数学教育に強い関心をもちました。 そこで科研費を頂いて留学生出身国における数学教育調査を行いました。 約6年間で14ヶ国を訪問しました。2001年から2006年ころです。現地関係機関を訪れ関係者や卒業生と会い、どの国でも高専への留学生選抜は非常に高い倍率であることを知りました。特に国費留学生になるのは超難関で、正にその国のエリートが選出されていることを知りました。卒業生たちは、高専卒業後、高専や日本との関係が殆ど途絶えてしまっていて寂しいと言っていました。私は、高専や日本と彼等とのパイプを創る必要性を痛感しました。これほど優秀で立派な人たちとの関係を絶ってしまっているのは、高専ばかりでなく日本にとっても大変損失と思えたからでした。

 そこで、2007年ころからマレーシアやインドネシアなど何度か私費で訪問し、ネットワーク創りを試みましたが、卒業生たちは非常に忙しく、現地支部を創って彼等に任せれば動くのではという、当初のもくろみは見事はずれました。

 やがて、別々だった「高専卒業生ネットワーク」構想と、「卒業留学生ネットワーク」構想が次第に一つになっていき、これらが車の両輪となれば双方に大きなメリットがあるに違いない、と思えるようになってきて、定年少し前の2011年に「卒業生ネットワーク」を高専数学教員35人の発起人を得て立ち上げました。 

 しかし形は出来ても中身は一向に発展せず、でした。 模索する中で、2013年担任した卒業生たちの支援を得る機会を得て、現在の「高専人」として漸く本格的に動きだし、2014年2月に第一回総会、11月に第一回国際交流集会を開催するに至りました。今後毎年の総会、国際交流集会が予定されています。これらの集会を通してコミュニティの目指すべきものを発見し実現させていきたいと考えます。

 バラエティに富む人たちによる、相互の協力と支援のし合える一つの豊かな社会ができ、個人の生活がより豊かなものになればと願っております。


参考資料(調査資料から)

[留学生側からの期待] 

 ・日本の事情をもっと知りたい、
 ・新しい技術・知恵をもっと得たい、
 ・職業・仕事の関係を持ちたい、
 ・親しい日本の友人をつくりたい、
 ・日本ともっと関係をもちたい、
 ・日本の役に立ちたい、
 ・日本の文化や教育に触れたい、
 ・世界平和に貢献したい、
 等

【日本側からの期待】
 ・多くの国の人達と親しい友人関係をもちたい、
 ・個人的、家族的な交際、交流をしたい、
 ・卒業留学生たちの役に立ちたい、
 ・国際理解、異文化理解、国際交流をすすめたい、
 ・技術協力・仕事協力をしたい、   
 ・現地で起業したり仕事をするときの連携・協力・情報提供の相手が欲しい、
 ・被災時の相互扶助システムをつくりたい、
 ・世界平和に貢献したい、


1)高専の留学生受け入れ状況

毎年160人位(国費留学生が80人から90人、マレーシア政府留学生が70人位)

国費生合計 102 91 94 88 93 90 91 81
マレーシア(政府留学生) 56 68 70 70 70 74 71 71
留学生合計 158 159 164 158 163 164 162 152




高専の留学生在籍(3年次から5年次)人数の変化(2003年から2011年)
留学生は、1983年から受け入れ26年間。総計は4500人位と思われる。
出身国は33ヶ国に及ぶ。
(留学生受け入れは1983年から。資料は2004年以降)

国別留学生数

'04

'05

'06

'07

'08

'09

'10

'11

インドネシア

13

11

11

10

12

13

16

17

ヴィエトナム

19

19

14

13

13

14

13

7

タイ

7

4

4

5

5

4

1

1

ラオス

10

11

13

13

14

14

16

15

ミャンマー

0

0

0

1

0

0

0

カンボジア

7

6

6

5

4

3

3

4

スリランカ

19

14

12

13

15

16

13

4

モンゴル

7

8

9

11

13

15

16

18

韓国

1

1

0

0

0

0

0

0

フィリピン

2

1

1

1

1

0

0

0

バングラディシュ

2

4

5

4

2

2

3

1

パキスタン

1

1

1

0

0

0

0

0

フィジー

2

0

1

0

0

0

0

0

インド

0

0

1

0

3

2

2

0

イラン

6

4

2

1

1

1

1

0

メキシコ

1

1

0

0

0

0

0

0

アルゼンチン

0

1

0

0

0

0

0

0

コロンビア

1

1

2

2

1

0

0

0

ブラジル

1

1

1

2

1

0

0

0

ペルー

0

0

1

0

0

0

0

0

ウガンダ

0

1

3

1

1

0

2

1

ガボン

0

1

1

1

1

1

0

0

ケニア

2

1

1

1

1

1

1

1

モロッコ

0

0

4

1

1

0

0

0

マダガスカル

0

0

0

0

0

1

1

1

ザンビア

0

0

1

1

1

0

0

0

ルワンダ

0

0

0

1

1

1

0

0

カメルーン

0

0

0

0

1

2

1

1

セネガル

0

0

0

1

1

0

1

1

エチオピア

0

0

0

0

0

0

0

1

ブルネイ

0

0

0

0

0

0

1

1

チュニジア

1

0

0

0

0

0

0

0

国費生合計

102

91

94

88

93

90

91

81

マレーシア

(政府留学生)

56

68

70

70

70

74

71

71

留学生合計

158

159

164

158

163

164

162

152


リンク先
日本学生支援機構webマガジン2013年10月号
特集  http://www.jasso.go.jp/about/webmagaz
「高専卒業留学生を含めた高専卒業生ネットワークコミュニティの構築」

contents

コミュニティ高専人事務局

E-mail






inserted by FC2 system